ポカン口が与える影響とは?口唇閉鎖不全症の原因やリスク、治療法を解説
こんにちは、綾瀬駅前の歯医者、メリー歯科です。
「マスクの中では、つい口が開いてしまっている」
「子どもによく口が開いていることを注意する」
それは、口唇閉鎖不全症だからかもしれません。
子どもに多い口唇閉鎖不全症(ポカン口/お口ポカン)の原因やリスク、治療法について解説します。
口唇閉鎖不全症(ポカン口)とは
食事や会話をしていないときでも口が開いてしまう状態を、口唇閉鎖不全症といいます。口の機能が発達していないために起こる症状であり、特に子どもに多く見られますが、大人でもめずらしい症状ではありません。
「食べる」「話す」といった機能が十分に発達していない状態を「口腔機能発達不全症」といいますが、口唇閉鎖不全症はその口腔機能発達不全症の症状の一つです。子どもの場合には親が気付くことが多いですが、本人で気づくことは難しく、また、大人になってからだと習慣になってしまっているために気づけない、なかなか直せないという特徴があります。
以下の項目に当てはまる数が多い方は、口唇閉鎖不全症の可能性があります。お子さんや自分に当てはめてチェックしてみてください。
- 口や唇が乾燥しやすい
- 滑舌が良くない
- 意識していないと口が開いてしまう
- いびきをかく
- 鼻炎症状を持っている
- 食事中に「くちゃくちゃ」という音がする
- 安静時に舌が前歯にあたっている
口唇閉鎖不全症の原因
口周りの筋力の問題
口唇閉鎖不全症の代表的な原因は、口周りの筋力の弱さです。
その原因はいくつか考えられますが、昔に比べて柔らかい食事が多くなっていること、口笛などの口を使う遊びが減っていること、SNSなどの文字を使ったコミュニケーションが発達し会話が減っていることなど、時代背景による原因もあると考えられています。
舌の問題
口唇閉鎖不全症は、舌の問題が影響していることがあります。
舌小帯(下あごと舌の間のヒダ)が短く舌を動かしづらい「舌小帯短縮」、安静時に舌が下あごに位置している「低位舌」などが、その具体例です。
これらは口唇閉鎖不全のほかに、発音障害や口呼吸、いびき、睡眠時無呼吸症候群などを引き起こします。
鼻(アレルギー)の問題
アレルギー性鼻炎などで慢性的に鼻水・鼻詰まりに悩まされている方や、左右の鼻の間にある壁(鼻中隔)が曲がっている鼻中隔湾曲症の方などは、鼻で呼吸がしづらいために口呼吸になり、口唇閉鎖不全症になってしまうことがあります。
そのほか、扁桃肥大や出っ歯、肥満の方も口唇閉鎖不全症になりやすいことがわかっています。
口唇閉鎖不全症のリスク
虫歯・歯周病
口唇閉鎖不全症には、さまざまなリスクがあります。
代表的なリスクとしては、虫歯・歯周病になりやすくなる点が挙げられます。
口を開けている時間が長いことで、口の中に雑菌が入り込みやすくなること、唾液の量が減り唾液の自浄作用・抗菌作用の働きが弱まることなどが、その理由です。
また、口唇閉鎖不全によってかみ合わせや歯並びが悪くなると、汚れがたまりやすい箇所や磨き残しが出やすい箇所が出てきます。それも、虫歯・歯周病のリスクを高めてしまう原因です。
口臭
口唇閉鎖不全でお口の中の唾液量が少なくなると、唾液によって洗い流されるはずの細菌が口内にとどまってしまいます。
また、細菌が増殖しやすくもなり、口臭の悪化につながります。
かみ合わせ・歯並び悪化によって口内に食べかすが残りやすくなるのも、口臭が悪化する原因です。
歯並び・かみ合わせの悪化
口唇閉鎖不全症が舌の筋力や位置によって起こっている場合、歯並びやかみ合わせの悪化につながることがあります。
舌は、安静時には上あごにくっついているのが正しい使い方ですが、上あごではなく前歯や上下の前歯の間に位置していることで徐々に歯を動かしていってしまう恐れがあるからです。
その結果、上下の前歯がかみ合わない「開咬」や前歯が前方に突出する「上顎前突/出っ歯」になるリスクがあります。
また、歯並びやかみ合わせだけでなく、お口周り全体のバランスが崩れ、面長になったり、ゆがみが出たりすることもあります。
ウイルスへの感染リスク
口唇閉鎖不全症の全身へのリスクとしては、ウイルス感染のリスクが高くなる点が挙げられます。
口を開けている時間が長いことで、風邪やインフルエンザなどのウイルスが体内に入り込みやすくなるためです。
また、鼻呼吸の場合は鼻の毛や粘液がフィルターの作用を果たしており、毛細血管が張り巡らされていることで加温されていますが、口呼吸の場合にはそういった作用がありません。
そのため、ウイルスが生存しやすい温度のまま肺に空気が送られてしまうことも、感染リスクを上げる原因となっています。
いびき・睡眠時無呼吸症候群
口を開けたまま寝ると、気道が狭くなります。
いびきは、気道の狭くなった部分に空気があたり、振動を起こすことで出る音です。
そのため、口唇閉鎖不全症の方はいびきが出やすくなります。
また、睡眠時無呼吸症候群の一つに分類される閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、気道が狭くなることで起こります。
そのため、口唇閉鎖不全は睡眠時無呼吸症候群のリスクも挙げてしまいます。
睡眠時無呼吸症候群は、生活習慣病やメタボリックシンドローム、心筋梗塞や脳卒中のリスクを上げることがわかっています。
口唇閉鎖不全症の治療法
MFT(口腔筋機能療法)
口唇閉鎖不全症の原因が、舌や口周りの筋力不足、舌の悪習慣などにある場合には、その原因を取り除くことが大切です。
これらの改善には、主にMFT(口腔筋機能療法)と呼ばれるトレーニングを行います。
MFTは口周りの機能を正しく改善させるためのトレーニングであり、筋力アップトレーニングや咀嚼・嚥下トレーニング、舌の正しい位置の習得トレーニングなどが行われます。
耳鼻咽喉科での治療
アレルギー性鼻炎や鼻中隔湾曲症によって口唇閉鎖不全に陥っている場合には、その原因を取り除くために耳鼻咽喉科で治療を受けましょう。
治療法としては、薬物療法やレーザー治療、手術療法などがあります。
まとめ
口唇閉鎖不全症は、お子さんが小さいうちに気づくことができれば、治療やトレーニングにかかる時間を少なくすることができます。
口を閉じる習慣をつけることが大事ですので、ポカン口に気づいたらこまめに声をかけるようにしましょう。
ご家庭でのトレーニングでは改善が難しい場合や歯並び・かみ合わせに影響が出てしまっている場合には、歯科医院にご相談ください。
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