歯が悪くないのに歯が痛い?非歯原性歯痛ってなに?
こんにちは。綾瀬駅前のメリー歯科です。
歯が痛いから歯科医院に言って治療してもらったのに、痛みが取れない。
もしかしたら、このような経験をされた方もいらっしゃるかもしれません。
歯科治療を行っても歯の痛みが取れない場合、その原因はいくつか考えられますが、その原因の一つに、痛みの原因が歯ではない歯痛、「非歯原性歯痛」というものがあります。
本日は、そんな非歯原性歯痛について詳しくご紹介したいと思います。
非歯原性歯痛(ひしげんせいしつう)とは
非歯原性歯痛(ひしげんせいしつう)とは、歯には異常がないにもかかわらず歯が痛む症状のことを言います。
歯の痛みのほとんどは、歯や歯の周辺組織にその原因となる疾患が明確に存在し、その治療をすることで痛みは消えますが、一方で必要な治療を行ったはずなのに痛みが消えない、というケースも少なからず発生しています。
そういったケースでは、本来治療の必要のない歯の治療を行ってしまうことも多く、健康な歯の神経を取ったり、抜歯をしてしまったりするケースもあります。
また、非歯原性歯痛の患者さんの多くは痛みの原因が分からず、複数の歯科医院や、内科・心療内科などのさまざまな医療機関を受診されていることも多く、長期にわたってさまざまな検査や治療を受けていたりします。
ある歯科大学がおこなった調査では、発症してから非歯原性歯痛と診断がつくまでの期間は平均4年、受診した医療機関は平均3.7施設、かかった医療費は平均22万円というデータもあるほど、多くの時間と費用を要してしまいがちです。
苦しみの時間を最小限に抑えるためにも、患者さん自身も「歯が原因ではない歯痛がある」という知識を持つことがとても大切です。
非歯原性歯痛の種類
筋・筋膜性歯痛
筋・筋膜性歯痛は非歯原性歯痛のなかでも最も多くみられる歯痛で、咀嚼筋(側頭筋,咬筋,顎二腹筋など)の疲労が原因で歯に痛みが生じます。
慢性的な筋肉への負担により筋が疲労した結果、筋肉が拘縮して「しこり」のようなものが形成され、それが原因となって歯痛が発生します。
痛みの多くは上下の臼歯部に現れ、何もしなくても歯に鈍い痛みがある、うずくような痛みなどの症状があり、食事などで筋肉を使うと痛みが増す傾向があります。
原因
筋・筋膜性歯痛は、咀嚼筋(側頭筋,咬筋,顎二腹筋など)を酷使することが原因となって起こります。
歯ぎしりや食いしばりの習慣があったり、不安やストレスなどの神経の緊張が続くことによって起こることもあり、最近では長期間のスマホやパソコンの使用なども咀嚼筋を緊張させる原因になるとして注目されています。
治療法
筋・筋膜性歯痛の治療は、顎関節症に準じた治療となります。
まずは、硬い食物やガムなどの咀嚼力を必要とする食べ物を控え、疲労した筋を安静にします。
また、歯ぎしりや食いしばり、日中の上下歯列の接触癖などがある場合には、認知行動療法を行い生活習慣の改善や見直しも行い、必要に応じでマウスピースの作製も行います。
患者さんご自身で出来る対策としては、疲労した咀嚼筋のマッサージも有効です。
筋肉の疲労で生じる痛みは温めることで軽減されますので、お風呂の中で10分程度、ストレッチやマッサージを行うのも有効です。
神経障害性歯痛
神経障害性歯痛とは、末梢神経または中枢神経そのものが障害を受け、それによって起こる痛みを言います。
痛みの症状はさまざまですが、発作的に電撃痛と表現されるようなビリっとした痛みが数秒から数分続いたりします。
また、食事や会話、歯磨きなどの刺激によっても痛みが生じるため、痛みに対して過敏になり、通常では問題のない刺激であっても痛みとして感じるようになります。
痛みに対して過敏になってしまった結果、睡眠障害や鬱、食欲不振などの症状も現れることもあります。
原因
神経障害性疼痛は、全身疾患が原因となって引き起こされます。
原因となる病気には、三叉神経痛や舌咽神経痛、帯状疱疹後や糖尿病の合併症に伴う痛み、脊髄損傷や脳腫瘍によって発生する痛みなどが挙げられます。
多くは神経と血管の接触によって発生するといわれており、開胸手術や根管治療、抜歯、インプラント手術などの治療後に神経障害性疼痛がおきることもあります。
治療法
神経障害性疼痛は全身疾患による神経の障害が原因となってい引き起こされる痛みであるため、通常の歯科治療をおこなっても痛みは治まりません。
治療は、まずは薬物療法を中心として行う場合が多く、カルバマゼピンなどの抗てんかん薬や、プレガバリンなどの神経痛に対する薬が使用されます。
治療は長期間かかることが多いため、長い目で根気よく治療を続けていくことが大切です。
薬の服用以外では、神経ブロック療法やリハビリテーションなどの機能訓練がおこなわれます。
神経血管性歯痛
神経血管性歯痛とは、片頭痛や群発頭痛の症状の一つとして起こる歯痛です。
頭痛は、患者さんにとっては歯痛と感じられることがあり、症状のある患者さんの34%が歯科を受診し、16%が抜歯されているという報告もあります。
女性よりも男性に多い病気で、吐き気や嘔吐といった症状が出る場合もあります。
原因
脳の血管が一時的な炎症を起こすために頭痛(片頭痛や群発頭痛)が生じ、その関連痛として歯痛が現れます。
痛みは歯の神経の炎症(歯髄炎)と大変似ているため診断が難しい歯痛の一つです。
治療法
頭痛(片頭痛や群発頭痛)の治療に準じた治療を行います。
片頭痛や群発頭痛は特殊な頭痛であるため、脳神経内科医や脳神経外科医などが在籍する「頭痛外来」を受診されるとよいでしょう。
群発頭痛は特に痛みが強いため、痛みを抑えるための薬物療法が主体となります。
上顎洞性歯痛
上顎洞性歯痛とは、上顎洞(鼻の左右両側、主に奥歯の上にある骨の中の空洞)にできた病気が原因で起こる歯痛です。
上顎の奥歯(上顎小臼歯、大臼歯部)に生じやすく、圧迫感を感じ、持続的な鈍い痛みとして感じられることもあります。
痛みは夜間に増し、冷やすと軽くなる傾向があり、噛んだ時に痛みや違和感を感じることもあります。
原因
上顎洞性歯痛が引き起こされる主な原因としては、上顎洞炎(蓄膿症)があります。
上顎洞炎(蓄膿症)は、上顎洞を囲む粘膜が炎症を起こすことで引き起こされ、上顎洞炎にかかった人の18%に歯痛が起こったことが報告されています。
上顎洞炎は主に細菌やインフルエンザウイルスへの感染、アレルギー性鼻炎などによって引き起こされますが、虫歯や歯周病などによって引き起こされるケースもあります。
上顎洞炎のうち、歯が原因のものを特に「歯性上顎洞炎」と呼び、主に下記の原因によって引き起こされます。
- 虫歯や歯周病が原因で炎症が上顎洞粘膜まで及んだ場合
- 抜歯をした時に上顎洞粘膜が感染した場合
- 根管治療の際に器具や材料が上顎洞粘膜を傷つけ、細菌感染をおこした場合
- インプラント治療中に上顎洞粘膜が傷つき、細菌感染をおこした場合
治療法
上顎洞疾患による歯痛は原因となっている上顎洞の病気を治療が主体となるため、鼻性のものは耳鼻咽喉科で、歯性のものは歯科医院にて治療を行います。
鼻性のものであれば、主に抗生物質を使用した治療が行われます。
歯科では、まず炎症の原因となっている歯を特定し、感染源の除去のために必要な治療を行います。
根管治療や歯周治療で感染源が除去できる場合もありますが、それでも痛みが治まらない場合は抜歯が必要となるケースもあります。
抜歯をし、上顎洞内を生理食塩水で洗浄して綺麗することでほとんどの症状は治まりますが、それでも上顎洞炎の症状が改善しない場合は、耳鼻科での内視鏡手術が必要になるケースもあります。
心臓性歯痛
心臓性歯痛とは、狭心症や心筋梗塞などの心疾患により生じる歯痛を言います。
痛みは発作的に生じ、多くの場合、胸の痛みと顔面の痛み、歯の痛みが同時に生じます。
また、運動しているときや興奮しているとき、食事の際に歯痛が生じることが多く、安静していると痛みが軽減するという特徴もあります。
痛みの持続時間は数分~20分程度で、30分以上続く場合はより深刻な症状と言えます。
原因
心臓性歯痛は、狭心症や心筋梗塞の痛みの関連痛として顔面部に痛みが生じると考えられていますが、そのメカニズムの詳細はまだ分かっていません。
治療法
心臓性歯痛が疑われた場合、なるべく早く内科、循環器科、循環器内科、心臓血管外科などの医療機関に診察を依頼し、血液検査や心エコー等の心疾患の検査を行う必要があります。
心疾患と診断された場合は、抗狭心症薬や抗血栓薬などの薬物療法やバイパス術などの外科的手術による治療が行われます。
精神疾患または心理社会的要因による歯痛
統合失調症やうつ病の症状の一つとして、歯痛が生じる場合があります。
また、医療への不満や不信、怒りや恐怖などから歯の痛みがおきることもあり、慢性化した痛みが不安やイライラ、抑うつなどの精神的変調を及ぼすことも明らかになっています。
原因
うつ病や不安症などのさまざまな精神疾患は、さまざまな身体の痛みとの関連が注目されています
社会的疎外感や死別、理不尽で不公平な待遇などで生じる心の痛みは「ソーシャルペイン(Social Pain)」とも呼ばれ、身体の痛みと同じ脳の領域を活性化するということが研究により判明し、心の痛みは身体の痛みと同じように、脳が痛みを感じていることが解りました。
特にうつ病患者で痛みを併発するすることが多く、痛みがあるとうつ病を長引かせたり、悪化させるリスクも高まります。
治療法
精神疾患による歯痛は精神科での治療が必要となります。
主には認知行動療法などの精神療法や、薬物療法による治療が行われます。
精神疾患の治療は時間を要する場合が多いため、まずは「痛みとうまく付き合うこと」を目標としながら長期的な目線での治療が大切です。
特発性歯痛(非定型歯痛を含む)
特発性歯痛とは、レントゲンやCTなどを撮影しても明らかな異常が認められない原因不明の歯痛で、抜髄や根管治療を行っても痛みが引かない歯痛を言います。
男女比では1対9と圧倒的に女性が多く、ジンジン痛む、じわじわ痛む、と表現されることが多くあります。
原因
特発性歯痛は、現在のところ、脳の神経ネットワークの異常と考えられていますが、明確には分かっていません。
治療法
虫歯の症状と非常によく似た症状を訴えるために、神経を取る、抜歯するといった治療法がとられがちですが、歯に原因があるわけではありませんので、歯科治療を行っても効果はありません。
また、痛み止めの薬やブロック注射も効果がなく、抗うつ剤による薬物療法と認知療法による精神治療が有効となりますので、精神科と連携を取りながら治療をすすめる必要があります。
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